Old Boy のイラスト日記

イラストを中心とした創作日記

一太郎2018は、書籍編集に使えるか?

InDesign CS6が使用困難になってしまった機会に、今年出た一太郎が書籍編集に使えるかどうか検証してみました。

結果を先に書いておきます。

結果 --- あと一歩。惜しい!

シンプルなソフトウエア

一太郎は、2006も持っていますが、Wordに比べて使いにくく、結局ほとんど使わずじまいでした。ですが、2018はパッと見非常にシンプルで使い易そうに見えます。

そうなんです、私的には、日本語の縦組みができ、よけいな機能はなくとも、デフォルトでプロライクなレイアウトさえできれば十分なのです。

縦書きにおけるページレイアウト

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上は、一太郎の作業画面上のページ表示です。

縦書きなので、ちゃんと右から左に並んでいます。当たり前ジャン、というコメントは至極もっともなのですが、少なくとも私が今使っているWord2010は、1ページが左に来て、2ページが右に配置されます。縦書きを完全に無視して、横書きのレイアウトで配置されるのです。

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ただ、一太郎の場合、偶数ページ、奇数ページの区別がなく、書籍にした場合の見開き表示もありません。もちろんWordにもありませんが、その点、InDesignはごくまっとうな表示が可能です。右に偶数ページが来て、左に奇数ページ。そして、見開きの場合は、各ページのノドとノドが連結され、書籍そのままのレイアウトが自動的に行われます。

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文字間隔が不自然?

書籍編集において神経を使う要素のひとつが、文字間隔でしょうか。

読みやすさの要素としては、

  • フォント
  • フォントサイズ
  • 文字間隔
  • 行間隔
  • 天地ノド小口それぞれの余白
  • ページサイズ

などの要素が単独で、あるいはそれぞれが絡み合って決定されます。私の場合は、ほとんど感覚で決めてしまいますが、装丁家やグラフィックデザイナーから指摘を受ける場合もあります。

グラフィックデザイナーの場合、書籍編集は行わないとしても、カタログやチラシなどの商業印刷においては、イラストレーターによるレイアウトの中に文字を流し込みます。書籍のレイアウトと負けず劣らず、文字の並びは、読みやすさに大きな影響を与える要素のひとつと言えます。

書籍の場合は、枠組みを作ってしまえば、あとはテキストを流し込むだけです。ただ、文字量が少なくありません。

自然な文字間隔になるように自動的に調整してくれないことには、とてもじゃありませんが、仕事になりません。

確かに昔は、一文字ずつ確かめて間隔を調整していた時代もあったようです。DTPの前の時代の話ですが。

そこで、一太郎2018とWord2010、InDesign CS6での同じフォント、同じレイアウト(一行の文字数、各ページの行数、上下左右のマージンを揃える)で比べてみました。

各ソフトで作成されたPDFを100%表示して、一見したところ、InDesignとWordの文字間隔はほとんど同じで、一太郎の文字間隔にちらほらと乱れが見られました。

ただ、それぞれを400%表示してみると、ほとんど変わらないことがわかります。

これは、あくまでもディスプレイ表示における表示能力の問題と言えるでしょう。

PDF入稿する限りは、どのソフトであっても、文字のレイアウトについては大きな違いはないようです。

ワードでルビを振るとなぜか行間が広がる

ここからは、細かな話になります。まず、ルビ。

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Word2010で作ったレイアウトですが、本文一行目の「面白い」にルビを振っています。

が、ルビを振った瞬間、なぜか一行目と二行目の行間が勝手に空いてしまいます。これは、書籍としては使えません。私の知識では、今のところ行間を空けずにルビを振る方法を知りません。ただし、ルビ無しの書籍であれば問題はないでしょう。

文字数、行数の固定が意外とやりにくいWord

機能が豊富で、結構使いやすいWordですが、意外と文字数、行数の設定がやりにくいところがあります。メニューの「ページレイアウト」にあるい「文字数と行数」タブ→「文字数と行数を指定する」を選んで数値を入れても、条件によっては必ずしもそのとおりになりません。恐らく無理なレイアウトにならないよう、限度を超えた場合は、指定した条件よりも他の条件が優先されるもののようです。

ただ、何が問題なのかがわからないことも多く、逆に、こちらの意図しない変更が勝手に行われてしまう、というある種の恐怖感のようなものを抱いてしまいます。

いろいろいじくっているうちに、目的のレイアウトが得られるのですが、編集という観点では、やや不安定なソフトに感じられます。

 

裏メニューに豊富な機能を盛り込んでいる一太郎

一見非常にシンプルな操作体系に見える一太郎ですが、「ツール」「オプション」「オプション」の中にかなり細かなメニューが入っています。

たとえば、日本語特有の段落一行目に一文字分の空白を入れるとか、始まりの鍵括弧がある場合は、空白は入れないなどの基本的な表現について、それぞれ「する」「しない」というような設定ができます。

こうした設定はInDesignであれば、ごく当たり前のようにできますし、後での変更も自由です。

が、なぜか一太郎では、この機能が入力アシスタントとしてしか作動しません。

つまり、文字をリアルタイムで打ち込んでいるときでないと、この機能が働かないのです。たとえば、一行目の空白を設定せずに、文章を打ち込んでしまったのだが、後で一行目を一文字分下げよう、と思っても下げてくれないのです。鍵括弧についても同じです。

後で自由に変更できない、というのは、書き手ならまだしも、編集という観点では、非常に使いにくいものがあります。自分で書き込んでいくならまだしも、作家やライターからテキストデータで原稿をもらった場合、一行目に空白一文字を入れることができないのです。いや、やるなら、すべての段落について、自分で空白を入れていかなくてはならない、ということになります。

(※文章校正機能の中に、一行目空白、鍵括弧始まりで空白無し、などのチェックが可能とのことです。もしかすると校正機能で一括変更できるかも知れません。なお、私のPCにインストールした試用版ではこの機能がうまく働きません)

その他、ものによってはInDesignよりもわかりやすい日本語の文章に対応した配慮がなされています。

惜しい、でも使えるところは使っていこう

一太郎2018は、エディターとしてはかなり優秀と言えます。

校正用のソフトであるJust Right!は、通常業務で使用していますが、これがあるとないでは、効率、というか作業時間に大きな差が生じてしまいます。(なお、Word等のオフィスソフトでは、JustRightがアドオン機能として搭載できるようになっています)

一太郎にもこのJust Right!の基本機能が搭載されています。

本当は校正など、あまりやりたくないのです。

校正のつもりが、いつの間にか読み込んでしまい、推敲になってしまった。ということがままあります。

間違い探しのような「校正」という仕事は、できればこうした専門ソフトで対処したい。Wordにも校正エンジンはありますが、どちらも一長一短あるようで、結果が微妙に異なります。併用することでさらに精度が高まるものと思います。

同じ言い回しをチェックする「頻出後チェック」機能なども、結構書き手にとっては重宝する機能と思われます。残念ながら、この機能、私がインストールした試用版では使えません。

一太郎は、WordとInDesignの中間で、ちょっとWord寄りにある?

総合評価としては、一太郎2018は、WordとInDesignの中間に位置するかな、と感じています。あと一歩 ーーー ちょっとしたところを工夫するだけで、たぶん限りなくInDesignに近づくように思います。もちろん、一太郎自体、編集ソフトになりたい、などと思っているわけではないでしょう。ただ、日本語に特化することと書籍レイアウトを意識するだけで、劇的に改善されるような気がするのです。

InDesignを超えて欲しい、というわけではありませんが、少なくとも日本語表記や日本語の書籍への対処という点でInDesignと同等を目指してくれれば、InDesignの使用時間が短縮でき、CCの金額もある程度抑えられるように思います。

あるいは、デザイナーがあまり使っていないInDesign一太郎の文書を流し込んでもらい、PDFにて確認という編集側にとって安上がりな進め方もできるかも知れません。

一太郎からInDesignにデータを移す際、ルビや傍点がうまく反映できるか、という細かな問題は多々あることでしょう。それでも、仕上がりに限りなく近い状態を一太郎側で作っておけるだけでも、だいぶ気が楽です。

日本製、ということもありますが、ちょっと応援したいソフトです。